ベータ崩壊 ベータほうかい beta decay とは 原子核の放射性崩壊の一種で 放射線としてベータ線 電子 と反電子ニュートリノとを放出する ベータ壊変 ベータかいへん ともいう b 崩壊のイメージ 中性子 n displaystyle mathit n が電子 e displaystyle ce mathit e と反電子ニュートリノ n e displaystyle ce bar nu mathit e を放出し陽子 p displaystyle mathrm p になる 原子核物理学放射性崩壊 核分裂反応 原子核融合放射性崩壊アルファ崩壊 ベータ崩壊 ガンマ崩壊その他の崩壊二重ベータ崩壊 二重電子捕獲 内部転換 核異性体転移 クラスタ崩壊 自発核分裂放出過程中性子放出 陽電子放出 陽子放出捕獲電子捕獲 陽子捕獲 中性子捕獲 R S P Rp高エネルギー反応核破砕反応 宇宙線による核破砕 光分解元素合成恒星内元素合成 ビッグバン原子核合成 宇宙の元素合成科学者ベクレル ベーテ キュリー フェルミ ラザフォード バーバー表編歴 中性子 陽子 電子 反電子ニュートリノ の遷移過程の右方向への遷移である 逆方向への遷移は電子捕獲 逆ベータ崩壊 と呼ばれる 概要ベータ崩壊においては 中性子が陽子に変化する 中性子が陽子に変化する過程においては電子が放出され この放出される電子のことをベータ線 b線 と呼ぶ ベータ崩壊にはベータ粒子 電子 と反電子ニュートリノを放出するb 崩壊 負のb崩壊 陰電子崩壊 陽電子と電子ニュートリノを放出するb 崩壊 正のb崩壊 陽電子崩壊 軌道電子を原子核に取り込み電子ニュートリノを放出する電子捕獲 二重ベータ崩壊 二重電子捕獲 double electron capture が含まれる いずれのモードで崩壊しても 質量数は変化しない つまり ベータ崩壊は同重体を推移する現象である ベータ崩壊の理論放射性物質の放つ放射線は ヘリウム原子核であるアルファ線 a線 電子であるベータ線 b線 波長の非常に短い電磁波であるガンマ線 g線 からなる ところで アルファ線とガンマ線のエネルギー分布は常に離散的な値を示すが ベータ線だけはなぜかそのエネルギー分布は連続的な値を示す この不可解なベータ線の連続的なエネルギーレベルを説明するためにベータ崩壊の理論が探索された まず ベータ崩壊をする原子核は量子力学における状態として連続的な状態を取ると考えられたが ベータ崩壊をする原子核の放出するアルファ線やガンマ線はやはり離散的なものであったことから否定された 次に はじめはアルファ線やガンマ線と同一のエネルギーレベルで放出されたベータ線が 二次的に散乱されたり 吸収されるため連続的な値を取るのではないかと予想されたが Ellis と Wooster によって否定された 1927年 ヴォルフガング パウリは 新粒子の存在を仮定すればベータ崩壊の連続エネルギー分布が説明できることを指摘した すなわち ベータ崩壊においては電子と一緒に 何か普通の方法では観測できない未知の粒子がもう一つ放出されており ベータ崩壊の前後における原子核のエネルギーの差は 電子とこの新粒子との間に分けられているため ベータ線 電子 のエネルギーは0からある一定値までの連続的な任意の値を取るのではないかとした 1931年 これに対して ニールス ボーアは1934年に ベータ崩壊のような原子核の内部の現象は原子スペクトルなどとは違って もっと程度の高い本質的に新しい物理学の範囲に属するから 必ずしもエネルギー保存則は厳密にも成り立たなくても良いという仮説を提出し パウリの新粒子説に反対した エネルギー非保存仮説 しかしながら その後このボーアのエネルギー非保存仮説は 実験及び理論の両面からその矛盾が指摘され 結局パウリの新粒子説が優勢となった そのパウリの新粒子はニュートリノ neutrino 中性微子 と名付けられ ベータ崩壊の理論 弱い相互作用の理論 建設の端緒となった 詳細は 弱い相互作用 を参照 エネルギー保存則の観点から見ると b 崩壊および電子捕獲は陽子の静止質量 938 27 MeV が中性子の静止質量 939 57 MeV よりも小さいため 真空中では本来発生し得ない事象である この陽子と中性子の静止質量差よりも 崩壊前後の結合エネルギーの差が大きい Q値が正である 核種のみ これらの反応が起こりえる ベータ崩壊の各モード各種ベータ崩壊のメカニズムを記す ここでは電子を e displaystyle ce mathit e 陽電子を e displaystyle ce mathit e 陽子を p displaystyle mathrm p 中性子を n displaystyle mathit n 電子ニュートリノを ne displaystyle nu mathrm e アップクォークを u displaystyle mathrm u ダウンクォークを d displaystyle mathrm d 負電荷を持つWボソンを W displaystyle mathrm W と表記する なお 反粒子は 例えば n e displaystyle bar nu mathrm e のように アッパーバーであらわす b 崩壊 クォークレベルでのb 崩壊 中性子が電子 ベータ粒子 と反電子ニュートリノを放出して陽子になる現象 単にベータ崩壊といった場合これを指す 一般的に 中性子過剰核 すなわち安定同位体よりも中性子の多い核種でb 崩壊が発生する n p e n e displaystyle ce mathit n gt p mathit e bar nu mathit e クォークのレベル 右図参照 では 中性子のダウンクォークがアップクォークに変化する 次のように表される d 1 3 u 2 3 e n e displaystyle mathrm d 1 3 to mathrm u 2 3 mathit e bar nu mathit e 原子核内で起こった場合 原子番号が1つ大きい元素に変化する Ar1842 K1942 displaystyle ce 18 42 Ar gt 19 42 K アルゴン42からカリウム42 半減期 32 9年 b 崩壊 詳細は 陽電子放出 を参照 陽子が陽電子 ベータ粒子 と電子ニュートリノを放出して中性子になる現象 正のb崩壊 陽電子崩壊とも呼ぶ 一般的に陽子過剰核 すなわち安定同位体よりも中性子の少ない核種でb 崩壊が発生する p n e ne displaystyle ce p gt mathit n mathit e nu mathit e クォークのレベルでは 陽子のアップクォーク一個がダウンクォークに変化する 次のように表される u 2 3 d 1 3 e ne displaystyle mathrm u 2 3 to mathrm d 1 3 mathit e nu mathit e 原子核内で起こった場合 原子番号が一つ小さい元素に変化する Nd60132 Pr59132 displaystyle ce 60 132 Nd gt 59 132 Pr ネオジム132からプラセオジム132 半減期 1 75分 電子捕獲 詳細は 電子捕獲 を参照 陽子が軌道上の電子を捕獲して中性子に換わり 電子ニュートリノと特性X線を放つ現象 ベータ粒子は放出しない e または EC electron capture と略される 書籍によって 軌道電子捕獲 と記述されることもある p e n ne displaystyle ce p mathit e gt mathit n nu mathit e 原子番号が一つ小さい元素に変化する 崩壊のメカニズムは大きく異なるものの 原子番号が一つ小さい同重体となる結果だけを見れば b 崩壊と電子捕獲は同じものといえる Ar1837 Cl1737 displaystyle ce 18 37 Ar gt 17 37 Cl アルゴン37から塩素37 半減期 36日 二重ベータ崩壊 詳細は 二重ベータ崩壊 を参照 ベータ崩壊が ほぼ同時に二回起きる現象 一回のベータ崩壊が原子核の質量が増える変化であるため起こらず ベータ崩壊が二回起きると質量が減る原子核に起きる 非常にまれにしか起きない現象であるため 半減期は非常に長い ニュートリノを放出する場合 単に 通常のb 崩壊などが二重に起きる ニュートリノを放出しない場合 ニュートリノが粒子と反粒子が同じであるマヨラナ粒子である場合などに起きる現象 標準理論では起きない現象であり 2006年現在未検証である この崩壊を観測することにより ニュートリノの質量やスピンについての不明な点が解明できる可能性があるため 研究が進められている なお 前述のマヨラナ粒子が関係するもの以外に 超対称性などが関係して起きる可能性も示されている ニュートリノがマヨラナ粒子である場合 例えば次のように二重ベータ崩壊が起きる可能性がある n p e n e displaystyle ce mathit n gt p mathit e bar nu mathit e 1つ目のベータ崩壊 n e n e displaystyle ce bar nu mathit e gt nu mathit e 反電子ニュートリノと電子ニュートリノは同一 n n ep e displaystyle ce mathit n nu mathit e gt p mathit e 2つ目のベータ崩壊 結局 全体では次のようになるので ニュートリノは放出されない 2n 2p 2e displaystyle ce 2 mathit n gt 2p 2 mathit e 二重電子捕獲 この節の加筆が望まれています 二重電子捕獲 を参照 複数の崩壊モードを持つ核種 核種によっては二つ以上の崩壊モードを持つものがあり 特有の確率でいずれかのモードで崩壊する 一般的に陽子数と中性子数が共に偶数のほうが安定であり そのように安定な娘核種が複数存在する場合にそのようなことが起こりやすい ここに記載した例はすべて親核種の陽子数 すなわち原子番号 が奇数のものである b 崩壊と電子捕獲 塩素36 半減期 30万1000年 1736Cl b 1836Ar displaystyle 17 36 mathrm Cl overset beta longrightarrow 18 36 mathrm Ar 1736Cl e1636S displaystyle 17 36 mathrm Cl overset varepsilon longrightarrow 16 36 mathrm S イリジウム192 半減期 73 83日 77192Ir b 78192Pt displaystyle 77 192 mathrm Ir overset beta longrightarrow 78 192 mathrm Pt 77192Ir e 76192Os displaystyle 77 192 mathrm Ir overset varepsilon longrightarrow 76 192 mathrm Os b 崩壊と電子捕獲 アルミニウム26 半減期 71万7000年 1326Al b 1226Mg displaystyle 13 26 mathrm Al overset beta longrightarrow 12 26 mathrm Mg 1326Al e1226Mg displaystyle 13 26 mathrm Al overset varepsilon longrightarrow 12 26 mathrm Mg マンガン52 半減期 5 59日 2552Mn b 2452Cr displaystyle 25 52 mathrm Mn overset beta longrightarrow 24 52 mathrm Cr 2552Mn e2452Cr displaystyle 25 52 mathrm Mn overset varepsilon longrightarrow 24 52 mathrm Cr b 崩壊とb 崩壊と電子捕獲 カリウム40 半減期 12億7700万年 1940K b 2040Ca displaystyle 19 40 mathrm K overset beta longrightarrow 20 40 mathrm Ca 1940K b 1840Ar displaystyle 19 40 mathrm K overset beta longrightarrow 18 40 mathrm Ar 1940K e1840Ar displaystyle 19 40 mathrm K overset varepsilon longrightarrow 18 40 mathrm Ar ヨウ素126 半減期 13日 53126I b 54126Xe displaystyle 53 126 mathrm I overset beta longrightarrow 54 126 mathrm Xe 53126I b 52126Te displaystyle 53 126 mathrm I overset beta longrightarrow 52 126 mathrm Te 53126I e 52126Te displaystyle 53 126 mathrm I overset varepsilon longrightarrow 52 126 mathrm Te a崩壊とb 崩壊 ビスマス210 半減期 5 013日 83210Bi a 81206Tl displaystyle 83 210 mathrm Bi overset alpha longrightarrow 81 206 mathrm Tl 83210Bi b 84210Po displaystyle 83 210 mathrm Bi overset beta longrightarrow 84 210 mathrm Po アクチニウム227 半減期 21 77年 89227Ac a 87223Fr displaystyle 89 227 mathrm Ac overset alpha longrightarrow 87 223 mathrm Fr 89227Ac b 90227Th displaystyle 89 227 mathrm Ac overset beta longrightarrow 90 227 mathrm Th ベータ崩壊による壊変系列ベータ崩壊後の原子核が不安定な場合 さらに崩壊を行うことになり 数種の同重体を経由する壊変系列を形成する 特に核分裂によって生じた核分裂生成物は 陽子数と中性子数との均衡を欠いており 両者の均衡を保てるところ ベータ安定線 までベータ崩壊を繰り返す r過程は魔法数を持った中性子過剰核が同様のことを起こすことで核種分布の山を作るという仮説により推定されている 酸素20からフッ素20 さらにネオン20 820O b 920F b 1020Ne displaystyle 8 20 mathrm O overset beta longrightarrow 9 20 mathrm F overset beta longrightarrow 10 20 mathrm Ne 脚注 富永 佐野 2018 p 17 a b c 電気学会通信教育会 基礎原子力工学 電気学会 東京都千代田区 電気学会大学講座 1982年5月20日 全国書誌番号 82036050 岩波講座 現代物理学 pp 197 201 参考文献エンリコ フェルミ 著 小林稔 編 原子核物理学 吉岡書店 物理学叢書 第1 1954年 全国書誌番号 56015532 武谷 三男 豊田 利幸 中村 誠太郎 現代物理学 原子核 第八巻 岩波書店 岩波講座 1959年 富永健 佐野博敏 放射化学概論 第4版 東京大学出版会 2018年 ISBN 978 4 13 062512 8 関連項目弱い相互作用 ウィークボソン ニュートリノ アルファ崩壊 ガンマ崩壊 パリティ対称性の破れ CP対称性の破れ 核子 粒子線 陰極線 パウリの排他原理 フェルミ粒子 スピン角運動量 電子捕獲 二重ベータ崩壊 二重電子捕獲 呉の実験 E mc2 この項目は 自然科学に関連した書きかけの項目です この項目を加筆 訂正などしてくださる協力者を求めています Portal 自然科学 表示編集, ウィキペディア、ウィキ、本、library、論文、読んだ、ダウンロード、自由、無料ダウンロード、mp3、video、mp4、3gp、 jpg、jpeg、gif、png、画像、音楽、歌、映画、本、ゲーム、ゲーム、モバイル、電話、Android、iOS、Apple、携帯電話、Samsung、iPhone、Xiomi、Xiaomi、Redmi、Honor、Oppo、Nokia、Sonya、MI、PC、ウェブ、コンピューター