テノール、またはテナー(英: tenor、仏: ténor、独: Tenor、伊: tenore)は、高い声域の男声歌手(カウンターテナーほど高くはない)あるいはその声域のことである。
概要
(4声体和声)、混声四部合唱においては、下から2番目に低い声部で、バスより高くソプラノおよびアルトの下にくる。テノールは概ね(C3)〜(C5)くらいの範囲の声域を持つ。これに対し、4声体和声や合唱ではC3〜A4くらいの音域である。音色は、透明感のある明るい声が特徴である。裏声(ファルセット)は通常使用しない(ファルセットを常用するのがカウンターテナーである)。混声四部合唱ではソプラノと合わせて高声、アルトと合わせて内声とよばれる。
声楽においては、テノールはト音記号のヴァイオリン記号を用いて記譜されることが多い。その場合は実音表記ではなく、1オクターブ下げて読む(そうであることを明確にするために、ト音記号の下に数字の8をつけることがある)。合唱の譜面において、バスと同じ五線上に書く時にはヘ音記号のバス記号が用いられる。また、現在では少ないものの、アルト記号が用いられることもある(近年の使用例として、ショスタコーヴィチ「忠誠」)。古くはテノール記号が使われていた。
しばしば楽器に用いて、同グループの異なる楽器との関係で音域を示すのに用いられる。一例としてはテナーサックス(テノール・サクソフォーン)がある。
「テノール」の呼び名は「保つ」を意味するラテン語のtenereからとられた。「(主旋律を)保つ者」の意で、元々グレゴリオ聖歌の長く延ばして歌う部分を指した。中世からルネッサンス期初頭のポリフォニー音楽においては、テノール声部は常に主旋律(定旋律、羅: cantus firmus、カントゥス・フィルムス)を与えられた。他の声部はテノールに対し和声あるいは対旋律を加えた。
4声の男声合唱を行うときは、テノールはさらにトップ・セカンドにわかれる。トップが主旋律を担当し、セカンドは対旋律を担当することが多い。
なお、近年のJ-POPにおいては高い音域を取り入れる楽曲が主流のため、テノールの音域もしくはこれより高い音域で歌われているものが大半を占めており、裏声を除けば(A4)付近を最高音とする楽曲が多い。
分類
特にオペラ歌手の場合、テノールの声質を以下のように分類、形容することがある。上の方の声質は「軽い、柔かい、若々しい」印象を、下の方はより「重い、たくましい」印象を与える。
- レッジェーロ
- リリコ
- リリコ・スピント
- ドラマティコ
一人の歌手の声質が加齢とともに変化していくことも多く、殆どの場合それは「軽い→重い」の方向となる。
これとは別の概念として、ヴァーグナー作曲の歌劇・楽劇における英雄的な役どころを演じるのに適した声質をもつテノールのことを「 」(独: Heldentenorから)と称することもある。
著名なテノール
日本国外
- あ行
- ヴラディーミル・アトラントフ
- フランシスコ・アライサ
- ロベルト・アラーニャ
- ルイジ・アルヴァ
- マルセロ・アルバレス
- ペーター・アンダース
- ジークフリート・イェルザレム
- ジョン・ヴィッカーズ
- ラモン・ヴィナイ
- ヴォルフガング・ヴィントガッセン
- フリッツ・ヴンダーリッヒ
- クルト・エクウィルツ
- ロタール・オディニウス
- か行
- ロベルト・ディ・カンディド
- エンリコ・カルーソー
- ホセ・カレーラス
- ジェームス・キング
- ホセ・クーラ
- アルフレード・クラウス
- グレゴリー・クンデ
- ニコライ・ゲッダ
- イワン・コズロフスキー
- フランコ・コレッリ
- ルネ・コロ
- さ行
- た行
- リヒャルト・タウバー
- リチャード・タッカー
- フェルッチョ・タリアヴィーニ
- ハインツ・ツェドニク
- イゴル・ツクロヴ
- ジュゼッペ・ディ・ステファーノ
- ピエロ・デ・パルマ
- アントン・デルモータ
- マリオ・デル=モナコ
- 田大成
- ジェス・トーマス
- プラシド・ドミンゴ
- な行
- は行
- ルチアーノ・パヴァロッティ
- ダニエーレ・バリオーニ
- ランド・バルトリーニ
- スチュアート・バロウズ
- ジャン・ピアース
- ピーター・ピアーズ
- ラウル・ヒメネス
- ユッシ・ビョルリング
- マリオ・フィリッペスキ
- クリストフ・プレガルディエン
- ミゲル・フレータ
- ヤン・ブロン
- ファン・ディエゴ・フローレス
- エルンスト・ヘフリガー
- カルロ・ベルゴンツィ
- アンドレア・ボチェッリ
- フランコ・ボニゾッリ
- ペーター・ホフマン
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- や行
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- わ行
日本
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